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教授挨拶

教授挨拶

金沢大学医薬保健研究域 医学系・教授 金子周一

教室の理念
“良い内科医を育成し、患者を救うことによって社会に貢献する”この理念は教室が始まった130年前から、戦争、日本国の誕生、大学の発足、いわんや研修制度の変更に左右されることなく続いている。教授になって初めて気づかされたことであるが、この故に、歴代の教授は時代に翻弄されることなく、ましてや、自らの興味や目的に左右されることなく良い内科医を育成してきたのであろう。当然のように、皆さんが教室を離れ、40、50歳になっても良い内科医として社会に貢献していることが私の喜びとなる。

内科医のすすめ
日に数時間だけ働いて、他の時間を自由に使えたら幸せだろうと思う。しかし、21世紀のあいだは週に30-40時間程度の仕事が続くと予想する。そうであれば、仕事に幸せを感じることが重要である。Work Life Balanceは大切だがWorkの時間が長い以上は、Workで我慢をしてLifeで楽しむということには無理がある。どうやって仕事で幸せを感じるか?それは皆さんが小さい頃から抱いてきた医師の姿を選択することである。トータルに人を診て、優しく接し、治して喜ばれ、死に接して別れを告げる。内科医の姿は行動的であり、知的であり、精神的な存在である。来る日も来る日も同じ仕事を繰り返しても幸せを感じることができる内科医をすすめる。皆さんが40、50歳となったときの社会を想像することはむずかしいが、内科医はいつの時代も大丈夫である。

やさしさだけでは救えない
医師は患者にやさしくなければならない。しかし、やさしさだけでは患者を救えない。医療の進歩はめざましく、かつ素晴らしい。わずか10年前に死んでいた患者が、今ではどれほど救われることか。最新の知識と技術を習得しなければ、患者を救えない。私も最新の医療によって末期の癌から救われた患者のひとりである。私のように患者になって体験することはすすめないが、医師になって出来るだけ早い時期に、医療の素晴らしさと、それを学ぶことの重要性、そして生命に対する畏敬の念を抱いて欲しい。

教室で教えること
これらのことは大学でなくても教えられる。大学の教室はそれだけでは不十分である。若い医師は、どこかの誰か、すごく賢い人によって医療が作られ、自分はそれを学ぶだけだと思っているかもしれない。しかし、学会や、場合によってはカンファレンスで発表するだけの小さな事実の積み重ねが医療の進歩に寄与している。教室では、この事実を体験して、医療がいかにして作られ進歩していくのかを知って欲しい。医師であるかぎりは常に新しい知識と技術を学ばなければならない。これは決して楽なことではない。しかし、教室にいて、ほんの少しでも医療の進歩に寄与するという経験を積むことによって、皆さんが大学を離れ40、50歳になっても最新の医療の進歩に遅れない医師になれることが実証されている。若い時だけ便利に使われ、そして捨てられてしまう医師を教室は作らない。それが教室の理念であるからだ。

そして、皆さんもすぐさま年を取り病院で後輩を教える立場になる。その時に医療がいかにして作られ進歩していくのかを知らなければ、若い医師に地方会の発表を指導することもできない。すると、次第にその職場にいるのがつらくなる。医師の生涯で、教室を経験することは大きい。

伝統の本質
これらを実践するためには、教室の多くの人が教室の理念を体験して理解していなければならない。教授ひとりが叫んでみても、現場で直接に教えてくれる、あるいは一緒に働く医師のひとりひとりが身をもって体験し理解していなければ、正しく若い医師と接することは出来ないのである。言うのは簡単だが、一朝一夕に出来ることでなく、それをもって伝統と呼ぶ。教室のブログを見て欲しい。良い内科医になるためには明るく楽しく、かつ正しく、学ぶことが重要である。この教室には130年の伝統があり、皆さんの未来を約束する。


金沢大学医薬保健研究域 医学系・教授 金子周一

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