後期内科研修について
後期内科研修について
金沢大学内科における後期臨床研修プログラム
■平成17年度より金沢大学内科は大きく生まれ変わりました
金沢大学医学部附属病院内科は、従来の旧第 1 内科、旧第 2 内科、旧第 3 内科から新しく、そして大きく高度連携内科 (United Specialities of Medicine ; USM) へと生まれ変わりました。
現在、本院内科に入院される患者さんの90%以上は複数の活動性の病気を有しています。たとえば、2003年度に旧第1内科に入院された患者966名の調査では単一病名の患者さんはわずか14%にすぎず、病名数の中央値は3でした。このことは、内科における診断・治療では多臓器に対応した診療が絶対に必要であることを示しています。したがって従来の偏った臓器別診療では、患者様を全人的に把握し最高の医療を提供することが難しいのは明白です。この点は診療だけではなく、学生ならびに医師の教育のうえでも深刻な問題でした。
この診療・教育での問題点を克服すべく誕生したのがUSMです。金沢大学高度連携内科では平成16年12月から旧第1内科、旧第2内科が臓器別診療科に再編成され、臓器毎に外来・病棟・カンファレンスが統一されました。そして、平成17年4月からは旧第3内科(血液・呼吸器内科)が加わり、3つの旧内科はそれぞれの臓器別診療を行うと同時に、臓器の専門家が密接に連携して内科診療と教育を行っています。これは大学病院における大きな変革であり、日本の大学病院では初めて診療科間の垣根をこえた診療・教育システムといえます。
このシステムには、患者さんにわかりやすく、そして各診療科の高い専門性を維持することに加えて以下に示す多くのメリットがあります。
- 診療面
・ 複数の臓器に疾病をもつ患者さんに対応できる
・ 全身に及ぼす影響を考慮した治療が行える
- 研究面
・ 臓器を超えた新たな医学・医療を創出できる
- 教育面
・ 内科医に求められる広い知識と高い専門性をもった人材を育成できる
・ 基幹病院において中心となっていく医師を育てられる
・ 内科認定医・専門医の資格取得に必要な教育が効率よく行える
今後は、ひとりの患者さんを巡って高度の専門性を有する専門医師団が結束し、ALL FOR ONEの姿勢で診療することにより、より良い医療の実現が可能になると確信しています。
■金沢大学内科は後期臨床研修を考えている皆さんのために全国初の体制をくみました
1 患者様と研修医のために内科のあり方を根本的に変えた、全国初そして大学病院ならではの内科研修です
平成18年4月より金沢大学高度連携内科(USM)では、1年間の内科後期臨床研修プログラムを開始します。このプログラムは2年間の卒後臨床研修を修了した研修医を対象とします。幅広い知識に基いた全人的医療を実践しながら、内科認定医・専門医資格の効率良い取得と、将来の専門性の基礎を築く有意義な研修がおこなえます。 以下に内科後期臨床研修の概要を示します。
<募集は随時行っております。ご連絡下さい。>
1. 上記の4つの研修パターンから選択が可能である。 |
2 他の内科研修プログラムとの違いはどこにあるのでしょうか?
他の大学病院や研修指定病院でも臓器別内科が一体となって内科教育にあたると説明しているところがあります。しかしその多くは研修医が臓器別内科を回って研修するにとどまっており、結局、ひとつの臓器に偏った教育になります。金沢大学が目指す高度連携内科は、このような通常のローテーションとは異なります。例として、以下に新入院から回診までの経過を示します。
|
これでわかるように、例えば循環器内科の病棟で主治医をしている時に、入院患者が心筋梗塞だけでなく糖尿病や腎障害をもっていた場合、研修医は内分泌・代謝の専門医と腎臓病の専門医からもカンファレンスや回診で直接教育・指導をうけることが出来ます。循環器内科にいる研修医が内分泌・代謝専門医に紹介状を書いて糖尿病のことを質問し、自分が同席しない外来で患者を診てもらった後に専門医から返書をもらい、書いてあることだけから学ぶという従来の臓器別診療体制下の教育とは雲泥の差があります。このシステムを実行する真の目的は、研修医を教育するためだけではなく、ひとりの患者さんを、高度の知識と技術をもった専門家がベッドサイドに自ら行って、きっちり診療することにあります。
このシステムこそ金沢大学高度連携内科(USM)が目指すALL FOR ONEの根幹をなすものです。 金沢大学内科に所属する高度の専門性をもった専門医集団が共同して一人の患者さんを診療、そして研修医である皆さんに対して責任を持って教育するシステムです。
3 金沢大学出身者ならびに他大学の卒業生に広く門戸を開いています
金沢大学の初期研修プログラムに限らず、他大学、あるいは研修指定病院で初期研修プログラムを修了した人も大いに歓迎します。金沢大学では、母校の卒業生や、金沢大学で初期研修を行った人だけを優遇することは決してありません。これまでもそうでしたが、初期臨床研修制度がはじまり、学生の流動性が保たれた現在では、さらに他大学の出身者を歓迎します。
4 関連基幹病院との良好な関係も魅力な研修システムです
関連病院から、研修が終わったら初期研修した病院に就職して欲しいと言われた人、あるいは自らが就職を希望している研修医もいるでしょう。金沢大学の内科研修プログラムでは、関連病院の先生方と相談して関連病院への出張を含めた研修のプログラムをデザインします。病院の体制に応じて、関連病院で初期研修修了後同じ病院で続けて後期内科研修を行うことも可能です。金沢大学で専門内科医として後期研修を終え、関連病院の先生方の期待通りに成長し、最終的に初期臨床研修を受けたような基幹病院で活躍出来るような医師を育てることが大学病院の使命です。
■大学病院で後期臨床研修を行うことのメリットはどこにあるのでしょうか?
皆さんはまだ初期研修の途中ですが、いつまでも研修医でいることはできません。研修期間が終わったら、社会、患者さん、医師同士そして病院から望まれる医師になっていかなくてはなりません。最新の医療技術を絶えず身に付け患者さんに提供できることは医師に望まれる最も重要な条件の一つです。皆さんが研修医時代に覚えた知識や技術はあっという間に古くなります。医師である限りは常に最新の医療技術を吸収して実行しなければなりません。研修医時代は何とか吸収できるのですが、年をとるにつれてだんだん難しくなってきます。
それでは、研修医が終わった後も、最新の医療を実践していける医師と、ついていけなくなる医師の違いはどこにあるのでしょうか? また、皆さんの周囲におられる立派な先輩方は猛烈なスピードで進歩している医療/医学にどのようについていっているのでしょうか? 実は、ここにこそ最新の知識と技術を得るだけでなく、もうひとつの重要な経験を研修医時代に積む必要性があるのです。このとても大切な事実が、目先の研修論議の中で見落とされています。一部の研修医はすでに気づいているようですが、多くの研修医は知らされていないようです。研修医の皆さんは、研修医時代に目の前の知識と技術を学ぶだけで、35歳、40歳と医師を続けていけると思いますか?
皆さんは、どこかの誰か、すごく賢い人によって医療が考えだされ、自分達はそれを学ぶだけだと思っているかもしれません。しかし、実際にはほんの小さな事実の日々の積み重ねが医療の進歩を支えています。大学病院では、医療がいかにして作られ進歩していくのかを皆さんが体験することができます。
すなわち
1学会で自ら発表する。 |
2自分で考え、そして論文を書いてみる。 |
3講演会/学会に参加して学ぶ習慣を身につける |
これらのことは、大学病院が最も得意とすることです。かなり大きな基幹病院であっても、これらを行うことは必ずしも容易でありません。これらを体験することによって、研修医時代が終わっても医療の進歩についていけるようになります。すなわち、日常の医療で新たな問題点を発見して解決したり、講演会や学会に出席し、論文を読んで、医療の進歩についていけるようになります。周囲にいる優秀な医師がこれまで歩んできた道のりを調べてみてください。皆さんを研修指導してくださっている医師は、学会に参加する、論文を読む、講演会に参加するといった方法で、最新の医療を実践し続けています。そうした先輩の医師のほとんどが、意識しておられるかどうかは別にして、上記の1、2、3を研修医時代から体験してきたからこそ、年齢を重ねても最新の医学を吸収しながら、それを展開し実践しているのです。研修医時代にこれらを経験しなければ、学会に行っても分からないし面白くないために出席点を取るだけとなります。論文を読むなどという面倒なことはせず、製薬メーカーのパンフレットを読むだけの医師になってしまいます。そして気がつけば最新の医療についていけなくなり、医師としての能力は低下するのです。医師の長い生涯で、研修医時代の数年の経験の差は実に大きいものです。
金沢大学の高度連携内科(USM)が目指す医師像はまさにここにあります。皆さんはこれから約40年にもわたる医師生活を送ることとなります。研修修了後も各基幹病院で実力を発揮し続けることができる医師、開業しても最新の医療を行える医師、まさにそうした望まれる医師の養成を金沢大学病院内科は目指しています。
■金沢大学高度連携内科の後期臨床研修では1年間の内科研修の後に専門内科を選択してさらに研鑽をつみます
内科医に内科の広い知識と技術が必要であることは言うまでもありません。また、内科認定医や内科専門医の資格は、ひとつの臓器別内科の経験だけでは取ることができません。そこで初期臨床研修が修了した卒後3年目から始まる金沢大学の内科研修では、1年間の内科研修を行い、翌年(卒後4年目)に専門内科を選択することになります。しかし、初期臨床研修の間に専門内科を長い期間選択する研修医もいます。また卒業の時点で、専門内科に早く入ることを決めて研修している人もいます。それらに応じて金沢大学の内科研修の1年目のプログラムは大きな自由度をもって変更が可能です。しかし、1年間のうち半年以上は、特定の専攻する予定の専門内科以外の内科を研修しなければなりません。
■金沢大学高度連携内科の後期臨床研修では大学院入学も推奨しています
初期臨床研修終了後、すぐに大学院に入学することも推奨します。専門内科を決めてから(卒後4年目以降)大学院にはいることも推奨します。しかし、いずれの場合であっても半年以上は、専攻する予定の専門内科以外の内科を研修しなければなりません。なお、大学院入学希望者は8月初め頃に出願、8月中旬に入学試験となります。
(入学試験の詳細についは、ホームページ: http://www.m.kanazawa-u.ac.jp/entrance/index.html をご覧ください)
■優秀な内科医は社会の宝です
研修医の皆さんは初期研修を通して、学生時代に想像していた内科医の生活と現実の生活とはかなり違っていると感じているのではないでしょうか。このように医療の実際を知ることが初期臨床研修の大きな目的でもあります。頭の良い人が内科に行くというのは誤解だということがわかったでしょう。内科医のQOLが低いという考えも誤りであることも分かったはずです。逆に、内科医が“医師らしい医師”であることを実感した人も多いのではないでしょうか? 学生時代に思っていたより、はるかに内科が重要であることに気がついたでしょう。内科の初期研修をしてみて、多くの人が、内科って出来そうだと思ったのではないでしょうか。内科医が全然足りないこともわかったと思います。これは国内だけでなく、米国でも同様で、内科医の将来は約束されています。自分を良くみつめ内科を選択して下さい。
■第1内科で全人的医療をふまえ、かつ高度の専門性をもつ内科医を目指しませんか
金沢大学第1内科は100年以上の歴史をもって「内科医としての総合力をもった専門医」の育成に綿々と努力を注いでいます。現在、金子周一教授のもと診療科として消化器内科、循環器内科、内分泌・代謝内科、腎臓内科、リウマチ膠原病内科を系統的に学ぶことができます。そして各診療分野の垣根を超えた臨床や研究の研鑽を積んだ結果、多くの優れた臨床医、研究者をあまねく全国に輩出している教室です。 具体的には2年間の初期臨床研修修了後、卒後3年目から第1内科に入局して頂きます。卒後3年目は上記の金沢大学高度連携内科(USM)後期臨床研修を1年間うけることとなります。ここでは入局後の流れを簡単に説明します。ぜひわれわれと一緒に社会、患者さんそして同僚の医師からも信頼され、期待されるすばらしい内科医を目指しましょう。
1 大学院入学の場合
最初の1年(卒後3年目)は高度連携内科において内科全般を統合的に研修する期間とします。卒後4年目(大学院2年目)から従来どおり各研究室に所属し、大学・第1内科関連病院や研究施設での臨床・研究を通じて学位の取得、各臓器等の専門医取得を目指します。
・卒後3年目(大学院1年目):USM研修
大学あるいは関連病院で内科研修
・卒後4年目〜6年目(大学院2年目〜4年目)
専門臨床研修・専門研究(大学・関連病院・研究施設)
・卒後7年目以降
大学・留学・研究機関・関連病院への就職・開業など
2 大学院に入学しない場合
第1内科入局(医員)に相当し、大学院には入学せず、医員・専修生として内科医(消化器・循環器・内分泌・代謝・腎臓・リウマチ膠原病)の臨床および研究を行います。もちろん、大学院には入学しなくとも学位取得に全力をあげて取り組みますし、すぐれた各専門医を目指して研鑽を積んでいきます。
・卒後3年目:USM研修
大学あるいは関連病院で内科全般にわたる研修
・卒後4年目〜6年目
専門研究室への所属
大学、または関連病院での臨床・研究
・卒後7年目以降
大学・留学・関連病院・研究機関など
募集は随時行っております。
なお、大学院入学希望者もご相談下さい。
■気軽に、まずは連絡をください
皆さんからの連絡をお待ちしております。
内科後期臨床研修や第1内科の詳細につきご説明致します。
連絡先 : 高村 雅之 (医局長)
TEL : 076-265-2233
FAX : 076-234-4250